金 言 『ここで夜、パウロは一つの幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願するのであった。』(使徒16:9)

説教題 「心の叫びに応えられる神」
聖 書 使徒行伝16:6~10
説教者 長谷部裕子師

あなたはクリスチャンになってから、元来の気質や性格が「以前より穏やかで物事に寛容になったとか、柔和でにこやかになりました」など変わりましたか。新約聖書には、救われてからはそれまでとは劇的に変わった人がいます。パウロです。厳格なユダヤ教徒だった彼はかつて、キリスト教徒は律法に逆らい神殿汚すものと誤解して憤り、キリスト教徒を迫害してステパノの処刑にも立ち会っていました。しかし迫害のために出かけたダマスコ途上で、復活されたキリストの御声を聞いて回心します。これを機にパウロは迫害者から宣教者に180度の大変身を遂げます。それまではキリスト者に対して容赦なかったサウロでしたが、クリスチャンとなるとユダヤ地方に起きたききんの見舞金をもって、エルサレムの教会を助けるために出かけました。

1. 御霊に導かれて

宣教者となったパウロは、3回の伝道旅行に出かけます。3回目の伝道旅行を終えてエルサレムに戻ると、反対派の律法主義者の企みによって監禁状態に置かれ、その後ローマ皇帝に上訴したパウロは、地中海の困難な航海を経てローマに送られます。晩年は明らかではないですが、紀元67年頃殉教したといわれます。
今日の聖書箇所は2回目の伝道旅行(使徒15:40~18:22)の前半に起こった出来事です。旅の目的は「さあ、前に主の言葉を伝えたすべての町々にいる兄弟たちを、また訪問して、みんながどうしているかを見てこようではないか」(15:36)でした。教会の結束を固めるのには「あの方最近、どうしておられるかな」と互いが安否を問うことで、主にある愛と一致は保たれるのです。信仰にある友から気にかけて祈ってもらえることは誰にとっても嬉しいものです。そういうわけで、パウロはシラスを伴ってアンテオケから出発してシリヤ、キリキヤ地方を通って諸教会を力づけます。(15:41)旅の途中のルステラでパウロはテモテを仲間に招き入れて一緒に旅を続けます。
ところがパウロたちは行く先々で御霊にとどめられて、やむを得ず行こうとしていた場所とは違った方角へ進まざるを得ませんでした。(6~7) 得てしてわたしたちは計画通りに行かないと、気落ちしてやる気を失います。けれど御言葉は「人の心には多くの計画がある、しかしただ主の、み旨だけが堅く立つ。」(箴言19:21)と言います。そして「主は言われる、わたしがあなたがたに対していだいている計画はわたしが知っている。それは災を与えようというのではなく、平安を与えようとするものであり、あなたがたに将来を与え、希望を与えようとするものである。」(エレミヤ29:11)ともあり、神のご計画は人のそれよりもはるかに優れた計画であることが、パウロたちにも後に明らかになります。

2. 心の叫びに応えられる神

パウロ一行は御霊に導かれて、エーゲ海に面した港町トロアスにたどり着きます。トロアスの意味は「トロイの傍」という意味です。その場所は有名なトロイの南25キロにありました。ここからギリシャ北部マケドニヤ地方に行く船便がありました。この夜、パウロは幻を見ます。ひとりのマケドニヤ人が「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」が懇願しています。「幻」(英訳はvision)に現れたマケドニヤ人はルカであろうという学者もいます。そうかもしれません。著者ルカがパウロとシラスとテモテに加わってくるのを暗示させるように、使徒行伝はこの箇所からは主語が執筆者を含む「わたしたち」に切り替わります。
いずれにしても、神様はこのひとりのマケドニヤ人の救いを求める心からの叫びに応えようとされます。そのためにパウロに幻を見せて救霊の思いを奮い立たせて、海を渡り未知の国ヨーロッパに遣わされました。

3. 福音を求める人たちを探して

パウロの最初の旅の目的は、第一次伝道旅行で訪問した教会の様子を見てこようというものでした。小アジヤ半島南部の諸教会に行こうとしていました。しかながら、なぜか行く手を御霊に妨げられたことで、目指していた方角とは全く別の道を行かざるを得ませんでした。神様の導かれるままに、トロアスに到着した夜にパウロにマケドニヤ人の幻が出てきます。「パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。」(16:10)こうして福音は海を越えてヨーロッパに渡っていきます。パウロの宣教はアジヤからヨーロッパに拡大していきます。激しい迫害の中で伝道は進められて、数多くの手紙が書かれた時代でもありました。伝道は神様の御業なのです。わたしたちの教会も神様が与えられた幻=visionを掲げて御霊に導かれて進みましょう。
(問1) せっかく計画を立てたのに違う道を選ばなければならないことがありましたか。
(問2) パウロは何を頼りに伝道旅行の次に行く先を決めましたか。
(問3) あなたは「福音を求める人たちを探すために」何をしたいですか。