聖 句「そして、夜が明けると弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び、彼らに使徒という名をお与えになった。」(ルカ6:13)

説教題 「選んだ者たちと共に」
聖 書 ルカの福音書6章12~19節
説教者 栗本高仁師

 素晴らしい働きの共通点の一つは、その働きが何代にもわたって継承されていくということではないでしょうか。まさに、イエス様の働きとはそのようなものです。

1)ここまでのイエス様の働き

 イエス様の宣教の働きの中心は「貧しい人(経済的、社会的、宗教的な意味で)に良い知らせを伝える」ことでした(4:18)。そのため、ここまで様々な力によって束縛されていた人々を解放してきたのです(悪霊につかれた人、ツァラアトに冒されていた人、中風の人、取税人たち、飢えている弟子たち、右手が萎えていた人)。彼らは、律法を守れないゆえに「罪人(すなわち、神の祝福にあずかれない者)」というレッテルをはられました。しかし、イエス様を通して、彼らは神の祝福をいただくことができたのです。それこそが、イエス様の宣教の働きでした。
 イエス様は良い働きをしましたが、それに対して異議を申し立てる人たちがいました。それが、パリサイ人や律法学者たちという宗教指導者です。彼らが長い間守ってきた伝統のゆえに、イエスの新しい働きを理解することができなかったのです。それゆえに、イエスはその価値観を刷新するようにと言われたのでした(5:38)。

2)新しい段階へ〜12人の任命

 そのような中で、イエス様の働きは新たな段階へと進んでいきます。イエス様は「祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされます」(12節)。イエス様は大切なことをされる前に、祈りをささげられました。あのバプテスマのヨハネから洗礼を受けて、聖霊が降る前も同様でした(3:21-22)。
 この時イエス様がされた大切なこととは、弟子たちの中から12人を選ぶということでした(13節)。なぜ、イエス様は多くの弟子たちの中から12人を選ばれたのでしょうか(明確に「その中から十二人を選び」とある)。この12という数字には、明確にイスラエルの12部族が意識されています。すなわち、イエス様は12部族からなるイスラエルの使命を担うものとして、イエスの弟子たちを任命したのです。イスラエルの使命とは、出エジプト記19章5節にあるように、この世界の中で光り輝く宝となって神様の祝福を分かち合うことでした。しかし、そのイスラエルの中心にいた宗教指導者たちは、神の祝福を分かち合うどころか、グループの外にいた人々を排除していたのです。それゆえに、イエス様は「新しい皮袋」として12人を選び、彼らを世界に遣わされようとするのです(「使徒(遣わされたもの)という名」を与えることによって:13節)。
 神様の働き、イエス様の働きは、私たち人を通して実現していきます。それも、この12人がそうであったように(ルカは驚くべきほど簡潔に名前だけを記す:14-16節)、何か特別な地位や能力があるからではありません。イエス様はあらゆる人にその働きを委ねてくださるのです。

    3)イエスの働きを間近で見る

     イエス様はその後、選んだ弟子たちとともに山を下ります。するとそこには、大勢の弟子たちの群れ、あらゆる地方から来た人々がいました(17節)。彼らは、イエス様の教えを聞くために、また、病気や悪霊から癒してもらうために来ていました。興味深いことに、イエス様の宣教の働きそのものは、これまでと変わらずに「教えること」と「癒すこと」でした。しかし、今度は「選んだ12人たちとともに」その働きをするのです。イエス様は彼らを身近に置き、ご自身の働きを見せられたのです。
     このように、イエスの働きを継承する使徒たちにとって大切なことは、イエスの働きを間近で見て、学ぶことでした。ただし、彼らが本当の意味でイエスの働きをしていくのは、ペンテコステ(聖霊が降る)まで待たなければなりませんでした。それは今日の箇所からも知ることができます。なぜなら、イエス様が人を癒されるとき「イエスから力が出て」とあるように、この力は紛れもなく「聖霊の力」であったからです(19節)。

     私たち一人ひとりも、使徒たちと同様にイエス様の働きを継承するものです。そのために、イエスがどのような価値観で生き、周囲の人々とどのように関わられたのか、イエス様の生き方から教えられたいのです。そして、その力の源である聖霊に満たされて遣わされてまいりましょう。