金 言 『ルツは言った。「お母様を捨て、別れて帰るように、仕向けないでください。お母様が行かれるところに私も行き、住まれるところに私も住みます。あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。」』
(ルツ1:16)

説教題 「信仰の母を慕い求めて」
聖 書 ルツ1:15~18
説教者 長谷部裕子師

本日は5月の第二日曜日、言わずと知れた「母の日」であります。母の日はアメリカ合衆国のある教会の行事 (アンナ・ジャービスさんが長年教会学校の先生をされていたお母さんの記念会をこの日に行った。) から始まったと言われます。今では日本の文化にすっかり定着して、毎年花屋の店先にはカーネーションを買い求める人が引きも切らずに押し寄せています。その感謝と愛情の表現は、ほのぼのとして心温まる光景です。
今朝の二番目の賛美は、聖歌353「世にもとうとき清きふみあり」でした。聖歌の賛美のジャンルは「母の日」となっていて今日にぴったりの賛美です。
新約聖書で母親といえば、誰もが「主の母マリヤ」を思い起こす。イタリヤの芸術家ミケランジェロの「サンピエトロのピエタ」はダビデ像と並ぶ最高傑作の彫刻だ。ピエタPietàの意味は慈悲であり、そのモチーフは磔刑に処された後に十字架から降ろされたイエス・キリストと、その亡骸を腕に抱く母マリヤの宗教画や彫刻のことである。母のイメージは慈悲深さであり、母が子を思う犠牲愛は神の愛に近いと言われる。
それでは旧約聖書の母親というとアブラハムの妻サラやサムエルの母ハンナを思い起こすだろうか。わたしは信仰の母と言えば、旧約聖書ルツ記の義理の母親ナオミを思い出す。この朝は「信仰の母を慕い求めて」という題でみことばを取り次ぐ。

1. 信仰と愛に満ちた母ナオミ

イスラエルに起こったききんから逃れるために、ナオミは夫エリメレクと二人の息子と共に、異国モアブの地に移り住んだ。その地で夫を亡くしたが寡婦として息子を育て上げた。やがて息子たちはモアブの娘を嫁にもらう。しかしナオミに試練は続き、頼みにした息子たちも失くしてしまう。あとに残されたのは女性3人のみ。そのときイスラエルにききんは去ったとの知らせを受け、ナオミはモアブからふるさとイスラエルに帰ろうと、思い立ち嫁たちと旅立つ。しかし旅の途中でナオミは嫁たちの幸せを考えて、彼女たちにモアブに帰って再婚をするように促す。これを聞くなり嫁たちはナオミを心底慕うあまりに声をあげて泣き出す。(9、14) ナオミと息子の嫁オルパとルツとは、いわゆる「生(な)さぬ仲」で血のつながっていない義理の親子関係だ。当然ぎくしゃくした関係であっても少しも不思議はない。(創世記27:46/旧36p)けれども嫁たちの態度からナオミの人格と信仰に深く感化を受けていることがわかる。ナオミは嫁たちにとって慈愛と信仰に満ちた立派な母親でした。そこでオルパは泣く泣くナオミの勧めに従いモアブに帰る。

2. 母ナオミを慕い神と出会うルツ

しかし相嫁のルツは故郷や家族を捨てても、義母ナオミについて行く覚悟でした。ルツはナオミ個人を母として愛するだけでなく、同時に「あなたの民は私の民、あなたの神は私の神」(16)と告白している。ルツはナオミというイスラエルの賢婦と出会い試練の中を共に生き抜いたことで、イスラエルの民を信じ愛して、ナオミの信じる神こそは自分の神なのだと確信する。ルツはナオミによって神に出会い真理を知ったからこそ、何の保証もない未知の国イスラエルに、信仰の母ナオミを慕って死ぬまでついていきたいと願う。信頼するナオミの命じることなら、何でも喜んで懸命に従おうと思った。
クリスチャンには「でもクリ」と「こそクリ」に二種類がいるそうだ。ナオミのような他の人を魅了して、自然体で力まずとも信仰の感化力があるクリスチャンになりたい。

3. 二人を祝福する神

ナオミはルツの固い決意を聞くと、ルツの願いを受け入れた。ルツは年老いたナオミを助けて、収穫後の畑で落ち穂を拾い集めるつつましい仕事に熱心に打ち込んだ。ルツが落ち穂を拾った畑は、奇しくもナオミと親戚ボアズが所有者だった。母を助けるためにけなげに健気に働くルツの姿に、心打たれたボアズはルツに手厚く配慮して自宅に戻す。ナオミはルツが図らずも働いた畑の持ち主がボアズであることを知って、神様から知恵を頂いて慎重に一計を案じると早速ルツに命じる。ルツは母ナオミが言われたように行動することで、ボアズにナオミの願いを伝える。やがてイスラエルのしきたりに従って、買戻しの権利を持つボアズがナオミの土地は買い戻した。そして嗣業を伝えるためにモアブ人の嫁のルツと結婚をする。こうしてナオミはルツが生んだ孫を信仰によって大切に育てた。神様はナオミを試練の中に置かれたが、やがて祝福をもって報いられた。さらにルツの生んだ子はオベデと名付けられ、ダビデの父エッサイの父であり、救い主イエス様の家系となる。異邦人ルツもまた「信仰の母」となった。

(問1) 母の日に愛するお母さんに何かしましたか。
(問2) ナオミとルツのそれぞれの良いと思うところをひとつあげてみましょう。
(問3) 神様はナオミとルツをどのように祝福されましたか。