金 言 「ですから、明日のことまで心配しなくてよいのです。明日のことは明日が心配します。苦労はその日その日に十分あります。」
(マタイ 6:34/新改訳2017)

説教題 「思い煩わない生き方」
聖 書 マタイ6章25~34節
説教者 長谷部裕子師

 最近のアメリカのあるリサーチでは、聖書で最も人気のある節は、何も思い煩うなと励ます聖句(ピリピ4:6~7)だそうです。日本人クリスチャンでもこれは同様かもしれません。どんなに心配しても、自分で解決できない問題が人間にはたくさんあります。一方で人の心配事の90%は実際には起こらないとも言われます。神様は人間が思い煩いやすい者だから、「思い煩わなくて良い。明日のことまで心配しなくてよい。」と憐れんで声をかけてくださるのです。ではなぜ思い煩う必要がないのでしょう。イエス様の山上の説教に耳を澄ませてみましょう。

1. 思い煩いを捨てて生きる(25)

 イエス様の時代の人々にとっての最大の思い煩いは、食べ物と飲み物は十分か、着物は足りるかでした。飽食でまだ食べられる食品が捨てられ、衣料がだぶついているこの国では、心情的に当時の様子を理解しづらいと言えます。昔から、衣食足りて礼節を知るというけれど、イエス様はたとえそのとき衣食が足りなくても、心配は無用ですと語ります。なぜかと言うと、人は神様によって造られました。もし神様が人に命のように尊く大切なものを授けてくださったならば、その命を保つために必要な食べ物も必ず与えてくれるはずだからです。同じように、からだは衣服より大切です。神様はすばらしいからだを与えられたからには、からだに必要な衣服も備えられるはずです。

2. 神にとって価値ある人だから(26~30)

 ここでイエス様が説教をされている場所を思い出してください。建物の中ではありません。大空の下、イスラエルの自然豊かな太陽とそよ風が吹く山の上です。空には小鳥が飛び交い、足もとには野草が咲いています。イエス様は目の前に広がる豊かな自然を指し示しながら、なぜ思い煩う必要がないかを、具体的に易しく話されました。自然の中に溢れている神様の恵みを教えます。あの空の鳥を見なさい。「種蒔きもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしません。」(26)鳥は人のように汗して働いているわけではないけれど、神様は彼らを養ってくださる。かといって鳥は怠けものではない。鳥は自分が生きるために懸命に働いています。ただ人間のように思い煩うことはありません。イエス様はその点を学ぶように言われました。
 「心配したからといって、少しでも自分のいのちを延ばすことができるでしょうか。」(27)と神様は人間の無力さを問いかけます。だから自分の限界をわきまえた上で、与えられたものに満足し、必要なものは神様に願い求めてあとはお任せしましょう。ありふれた野の花は、人のように働きも紡ぎもしませんが、神様は短い命を養ってくださいます。「栄華を極めたソロモン」でさえ、その花が持っている可憐な美しさには及びません。「野の草さえ、神はこのように装ってくださるのなら、あなたがたには、もっと良くしてくださらないでしょうか。」(30)人間は神様にとって尊い価値ある、愛してやまない存在ですから、神様はあなたを必ず顧みてくださるのです。思い煩う者は、自分の裁量で何とかしようとします。彼らは神様の働かれる御業を信じていない信仰の薄い人たちです。

3. 全ての必要を知られる天の父(31~34)

 思い煩いから解放されるためには、自分や周囲を見るのではなく、その問題から目を離して神様を思い注意を向けることです。問題に囚われ振り回されることなく、問題のゆくえを掌握し、すべてを支配しておられる神様に思いを寄せるのです。天の父は人間の必要をご存知です。「天におられるあなたがたの父は、ご自分に求める者たちに、良いものを与えてくださらないことがあるでしょうか。」(マタイ7:11)神様はご自分を求めてくる者を辱められません。だから私たちは思い煩いを手放して御顔を仰いで「まず神の国と神の義を求め」るのです。イエス様は「そうすれば、これらのものはすべて、それに加えて与えられます。」と約束されました。(33)
 最後に主は「明日のことまで心配しなくてよい」と言われました。明日のことは誰もわからない。それどころか今日何が起こるかさえわかりません。それゆえイエス様は、与えられたその日その日を精一杯生きるように言われます。それは決して運命とか宿命だからあきらめないさいと言われたのでなく、神様への期待をもって積極的に生きよと言われたのです。今日という日に恵みが門口であなたを待ち構えているかもしれません。結論は神様を信じて明日起こるかもしれないすべてのことを神様に委ねることです。必ず顧みてくださる神様がおられるので余計な心配はしないことが、信仰者の生き方です。思い煩いを手放して心を身軽にしませんか。

(問1) あなたが今心配なことは何ですか。それについて神様に祈りましたか。
(問2) 空の鳥や野の花を養われる神様は、なぜあなたを心配されると思いますか。
(問3) 思い煩いから解放されるためには、あなたはどうしたらよいですか。