金 言 「マリアは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方がご自分の民をその罪からお救いになるのです。」(マタイ1:21/新改訳2017)

説教題 「神はわたしたちのただなかに来られた」
聖 書 イザヤ7:14、マタイ1:21~23
説教者 長谷部裕子師

今日から待降節に入ります。町中にも華やかなツリーがあちこちに飾られ、イルミネーションがきらめき、今では大げさではなくその土地の宗教に関わらず、世界中がクリスマスをお祝いする季節が到来しています。その一方で二千年前のファースト・クリスマスは人目を引く華やかさとはかけ離れた、イスラエルのひなびたわびしい家畜小屋に訪れました。しかも唐突にではなく、旧約聖書の歴史の中で預言者たちによって語られ続けてきた「インマヌエル預言」の成就でした。神は約束された通りに、わたしたちのただなかに来られたのです。すべての人を救うために。救い主のお姿は誰もがひれ伏す威厳に満ちた王としてではなく、人間の想像を遥かに超えたひとりのいたいけな愛らしい赤ん坊として、神のひとり子としてこの世界に来られました。

1. 約束された救い主が来られる

マタイによる福音書1章21節で、神の御子の誕生が告げられる「インマヌエル」という言葉が、最初に出てくるのは旧約聖書のイザヤ書7章14節です。イザヤ書において語られた時代背景は、バビロン捕囚(587-538)に遭うかなり前の紀元前730年頃でした。南ユダ王国はその時代、超大国アッシリヤの脅威にさらされていました。このことにアハズ王の心も民の心も「風に動かされる木のように」国全体が動揺していました。(イザヤ7:2)あわてふためくアハズ王の出した結論は、浅はかにも脅威の的であるアッシリアと手を組もうとしました。預言者イザヤはアハズ王がアッスリヤと安易に和合しようと計れば、逆にユダは侵略され食い尽くされてしまうと直言します。イザヤは人間の浅知恵で現実の問題を解消しようとしないで、まず天を仰いで神を見よと諌めます。イザヤは「おとめがみごもって男の子を産む。その名はインマヌエルととなえられる。」(7:14)と預言します。<インマヌエル>とは「神がわたしたちと共におられる」という意味です。イザヤはアハズ王に特別な誕生の出来事が起こり、それは神が共にいて救ってくださるというしるしだから、あなたは恐れたり動揺することなく神の平安を取り戻しなさいと告げます。

2. ただ一つの慰めになるために

わたしたちもアハズのように自らが対処しきれない問題に直面すると、神に尋ねることもしないで信仰によらない安易な解決策に頼りたくなります。少し冷静に考えてみてください、私たちの神は、かつて遭遇した出来事も、現在起きつつあることも、将来起こるであろうことも、すべての道を知られるお方なのです。この神にどんな隠し立てもできませんが、いかなる罪に陥っても、悔い改めて神のもとに帰ってくるものを、見捨てることなどなさらないで、その罪を赦し救い上げてくださる、どこまでも人を憐れみ、慰めに満ちた神なのです。
今、祈祷会で学んでいるテキストは「ハイデルベルグ信仰問答」です。その第一問は「生きるにも死ぬにも、あなたのただ一つの慰めは何ですか」と問いかけます。答えは「わたしがわたし自身のものではなく、身も魂も、生きるにも死ぬにも、私の真実な救い主、イエス・キリストのものであることです。」と教えます。病気、事故、親しい人の死、悲しさや寂しさが募るとき、気落ちするとき、自信を喪失したとき、人生のあらゆる局面で、人は慰めを必要とします。ところが人から慰めには限界があり、ときには煩わしいことさえあります。そんな中どんな状況でもその人が最も慰められるのは、神が離れずに一緒にいてくださる、という事実です。

3. クリスマスは神の愛の刻印(しるし)

マタイによる福音書1章で、ヨセフに主の使いが告げます。「心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」(20-21)これによってヨセフは苦悶から解放され、深く慰められ平安に満たされます。こうして神はわたしたちに救い主イエス・キリストを愛のしるし希望の光として、授けられたことを喜びお祝いするのがクリスマスです。神の深い愛は幼な子イエスを取り囲み、その誕生を崇め喜ぶ人々の姿に象徴的に描写されます。その影には神の崇高で深い決意がありました。それは「ご自身の御子をさえ惜しまないで、わたしたちすべての者のために死に渡された」(ローマ8:32)御父のまことの愛です。ベツレヘムのクリスマスはカルバリの十字架へとつながる道の原点なのです。それを覚えて今朝は聖餐にあずかりましょう。

(問1) インマヌエルとはどういう意味ですか。
(問2) 神から慰めを受けた経験がありますか。それを書いてください。
(問3) クリスマスと十字架はどうつながりますか、説明してください。