金言
「御国が来ますように。みこころが天で行われるように、地でも行われますように。」(マタイ6:10)

説教題 「御国が近づいている」
聖 書 マタイ6:5~15
説教者 井上義実牧師

 2022年度の荻窪での礼拝説教は4つのテーマが示されてきた。教会暦・教会行事に基づいた説教、昨年からの聖書各巻緒論、バックストン著作集から信仰の継承、御国が近づいている、以上の4つになる。

Ⅰ.御国が近づいている

 先の3つの主題は以前から続いてであるが、「御国が近づいている」が新しく示された。コロナ禍は4年目となったが収束は見えてこない、自然災害は各地で激しくなっている、ウクライナで戦争が起こり世界に陰を落としている、愛が冷えて恐ろしい事件が起こっている、これらは終わりのしるしと言える(マタイ24章参照)。礼拝説教でも終末が近づくと語ることが増えたが、危機を煽るつもりではない。主の再臨に対して、適切な緊張感を持つべきである。主題は御国としたが、新約聖書では天国(マタイが多用)、神の国(ルカが多用)もほぼ同じ意味で語られている。

Ⅱ.御国は完成へと向かっている

 神の国はイエス様の中心となるメッセージの一つである。イエス様が世に対して語られた最初の言葉は、(マルコ1:15)「時が満ち、神の国が近づいた。悔い改めて福音を信じなさい。」であった。神の国は、イエス様がこの地上にお出でになり、福音を宣べ伝えられ始めたことによって到来した。神の国はこの世の国ではなく、(ルカ17:21)『見よ、ここだ』とか、『あそこだ』とか言えるようなものではありません。見なさい。神の国はあなたがたのただ中にあるのです。」目には見えないが、信じる私たちの間にすでに存在している。イエス様は神の国を多くのたとえで語られたがその一つに、(マルコ4:30~32)「それはからし種のようなものです。…蒔かれると、生長してどんな野菜よりも大きくなり、」最初は小さくとも、大きく成長し続けることを示された。イエス様の福音を直接聞いた人は多くはない。イエス様の弟子はわずか12人であった。2千年の時を経て、全世界に福音は伝えられ、世界で最も多くの人が信じる宗教になった。神の国は今も成長し続けている。神の国の完成は、新しい都エルサレム、新天新地の到来によってなされる。

Ⅲ.御国が進んでいくための祈り

 今朝の聖書箇所は山上の説教の中で祈りについて、イエス様が語られた箇所である。祈る際にとるべき実際の姿勢について語られた。律法学者、パリサイ人のような偽善者であってはならないこと、隠れた場所で、率直な言葉で祈ることを勧められた。そして、(9節)「あなたがたはこう祈りなさい。」と、祈りの実際の言葉として主の祈りを教えられた。「あなたがたは」とは弟子たちに、信じる者たちの共同体に語られている。主の祈りは個人での祈りでもあるが、心を合わせて共に祈ることが大切である。イエス様は、(10節)「御国が来ますように。みこころが天で行われるように、地でも行われますように。」と語られた。地上で御国が拡大していくとは、(ルカ17:21)「神の国はあなたがたのただ中にある」との言葉に重ねると、イエス様を信じる者が増し加わることによって神の国が大きくなっていくと言える。御国がこの地になされていくという祈りは、宣教の拡大のための祈りである。福音の宣教によって人が救われることが、御心が行われていくことである。その神の国に神様の愛、恵みが表わされていく。神の国は神の民が加わっていくことによって拡大していくが、神の国に相応しい整えが必要である。パウロはミレトスの惜別説教で私たちが御言によって成長し御国の民とされることを語っている(使徒20:32)。この年も、私たちがあらゆる点で成長していく者となるように共に励もう。

私たちは地上で神の国の拡大のために戦う者である。やがて主が再臨されて御国が完成することを待ち望むが、今この時に与えられている使命を果たしていこう。